私の手元にもMG42 ABB(2nd Engine)がありますが、ともかく重厚で飾っているだけでも様になるほどの外観が素晴らしく、同社のMP44も是非手に入れたいと思っていました。
残念ながら前回の販売から長らく再販がなく、再販を待ちきれずに程度の良さそうな中古を入手してみたのでレビューしていきたいと思います。
ベースとなった実銃のMP44といえばstg44のことを指しますが、この銃は試作のMKb42(Maschinenkarabiner 42)に始まり、MP43・MP43/1を経てMP44になり、stg44に改名されるというややこしい経歴の持ち主です。
元々、開発時は戦時中のうえ、改良を重ねつつ細部を変更していたため、運用方法が変わらないのにバリエーションが多岐にわたり存在するものとなりました。
加えてヒトラーが開発に対して難色を示していたため、秘密裏に開発するため改名に改名を重ね、最終的にはstg44となりました。
しかし、モデル名の迷走はあったものの、ライフルと短機関銃の間を埋めるコセンプトは後世に大きな影響を与え、突撃銃の始祖(その後世界に与えた影響的に)として、現在に至るまでのアサルトライフルにそのコンセプトが受け継がれています。
そんな銃の歴史に新しいジャンルを生み出したMP44をSHOEIはモデルガン、電動ガンの他に、今回紹介するABB(エアブローバック)モデルとして世に送り出しています。
これがSHOEIのABB版MP44です。重厚な雰囲気が漂っていてエアガンというか遊技銃という雰囲気とはかけ離れた完成度を感じます。
サバゲーに持って行った際は、まるで実銃みたいだと言われたこともあり、樹脂製のエアガンが多い中、異質な存在として目立ちます。
実銃では、MP40やMG42と同じく生産性を考慮しプレス加工を多用した銃でしたが、SHOEIのMP44シリーズは亜鉛ダイキャスト製にもかかわらず、プレス加工の素朴で無骨な雰囲気を生み出しています。
ストックも本体に負けないぐらいの重厚感のある木製で、軽い雰囲気を微塵も感じさせないものがあります。
もちろん、スリングベルト用のスリットもあり、革製のスリング等を取付けることができます。メーカー不明のレプリカスリングを取付けてみたのですが、これはこれで又ひと味違った雰囲気を楽しめます。
マズルはM14正ネジでハイダーやサプレッサーが装備できます。
SHOEIのMP44 ABBはASCSユニットのため、特有の乾いた発砲音がするのですが、ASCSユニットは銃口からしかエアーを放出しないため、サプレッサーを付けると劇的に音が減衰します。
見た目は酷いものですが、サバゲーで使ってみたいというマニアックな方は発砲音による位置の特定が難しくなるので、少しはメリットになるかもしれません。
また、ASCSユニットの慣らしの際に騒音を低減させることができます。
エジェクションポートはARと同じく機関部への異物混入を防止するダストカバーがついています。
コッキングハンドルを引くと、ダストカバーが自動的に開き射撃可能な状態になるのも同じです。
ハンドガードは脱着式で、ハンドガードを外すとホップアップ調整用のレバーがあります。
ボルト側に押し込むとホップアップがかかりますが、ホップアップの構造等しては珍しい板バネ構造のうえ、MP44の癖も相まって調整はかなりシビアです。
というのも、MP44のASCSユニットは初発と2発目以降の初速が違うため、ホップアップの効き具合が変わってしまいます。
セミオート、フルオートかどちらをメインで使用するかにより、ホップのかけ具合を設定する必要があり、一度設定を変えると再調整するのは手間がかかります。
セーフティとセレクターについては一般的な銃にありがちな設定とは真逆で、レバーがセーフティ(しかもSがファイヤでFがセーフティと英語表記とは逆)とファイヤになっており、セミ・フルオートの切り替えはセーフティ上部に位置するボタンで切り変えます。
このセレクターですが、電動ガンモデルではセレクター回りの造形がデフォルメされており、セレクターが左右にスライドするという本来と異なる動きでしたが、ABBモデルでは実銃と同じように再現されています。
他にも、電動ガンモデルではモーターとメカユニットの関係でグリップの角度が実銃とは違うものになっていましたが(コピーモデルのAGMも同じ)、ABBモデルは実銃と同じグリップ角度になっています。
ただ、ABB版ではグリップ下部からエアー供給用のホースが出ているため、リアリティに欠ける部分はどうしても出てきます。
また、ASCSユニットのためエジェクションポートから真鍮のASCSユニットが見えるのも、最近のリアリティを追求したGBBに慣れているためか、リアリティに欠ける要素だと感じざるを得ません。
マガジンはロットによる違いがあるようで、手持ちのマガジンには2種類の細部の違うマガジンがあります(マガジンリップ後部の構造・使用しているネジ、スポット溶接後の処理が違う)。
※ボルト干渉対策のため一部加工済み
ロットの差異の他にも、マガジンの個体差が大きく、個体によってはリップ部分がボルトに干渉してジャムを引き起こすものや、弾上がりが悪く給弾不良で空撃ち、閉鎖不良に繋がることもあるため状態によっては調整が必要です。
ボックスマガジンの工作精度が酷いとジャムの原因になるのは実銃も同じですが、サバゲーでガンガン使う銃でもないですし、モデルが古い銃だけにジャムも1つの味だと思えてくるのがこの銃の魅力だと個人的には思います。
マガジン装弾数は60発となっていますが、実は90発近く装弾が可能です。
ただし、60発を超えて装弾するとジャムの頻度があがるため、メーカー推奨は60発という設定になっています。
マガジン内部にシリコンを吹き付け、シリコンを吹き付けたBB弾を使えば90発装填でもある程度実用できるほどジャムの頻度が落ちます。
それでも足りないという場合は、AGMの電動ガンMP44のマガジンと互換性があるとの情報が出ているので、AGMの電動MP44用480発多段数マグを使うといいかもしれません。
なお、マガジンの弾上がりについてはBB弾との相性が大きく、表面がコーティングしているようなツルツルしたBB弾(G&G・マルイのバイオ等)は弾上がりが良いですが、それ以外だとシリコンを吹きかけても弾上は極端に悪くなります(マガジンの問題では無くチャンバー周りの問題の可能性がある)。
メンテナンスについてはフィールドストリッピングが可能になっており、ASCSユニットを丸ごと取り出して洗浄やシリコンオイルの塗布ができます。
ASCSユニットは金属性のため耐久性はあるものの汚れに弱いため、定期的に分解洗浄、シリコンオイルの塗布というメンテナンスが必要になっています。
また、ASCSユニットの慣らしは3万発必要ともいわれており。3万発撃って初めて各パーツの当りが出てくるとのことなので、余り使用していない程度の良いものや、新品の場合は最初に慣らし作業を推奨します。
※グリーンガスではコストが高くつくので、ミドボンにグリーンガス用のレギュレーターを付けられるアダプターを使うと慣らし時のコストを抑えられる。
付属品にはグリーンガス用のレギュレーターがあり、グリーンガスを使用する他、エアータンクやエアーコンプレッサーから圧縮したエアーを供給して動作させることも可能です。
ASCSユニットは安定した圧力のガスやエアーを安定した流量で供給しないと動作性が低下するため、最初から外部ソース仕様になっていますが、外部ソース前提の設計のためリコイルショックは非常に強いものとなっています。
SHOEIのMP44 ABBでは合計で488gになるボルトとボルトキャリア(コッキングレバー含む)を動かすため、ズッシリとした粘りのあるリコイルショックがストック越しに伝わってきます。
本体の重量が4.79kgとかなり重たいのでセミオートではもっさりした感じのリコイルショックですが、フルオートで撃つとグラグラと体を揺さぶるような激しいリコイルショックを感じます。
残念なのはストロークが実銃と比べて短くなっており、本来下がるはずのストック手前までコッキングレバーが下がりません。
これは、仕様故に致し方ないところですが、MG42 GBBのように再販の際に改良を加えてもらえるのであればストロークを改善してもらいたいところです。
初速は初段とそれ以降のバラツキが大きく。セミオートだと81~86m/s程度、フルオートでバーストすると2発目以降は76~79m/s程度の数値が出てきます。
これが、バーストすると大きく弾道が変化する原因となっており、また、セミオートとフルオートでホップアップのセッティングが変わってくるので、ホップアップのベストセッティングはどちらかに合せるしかありません。
なお、サイクルは実銃の8.3-10発/秒に対して9.57/発と実銃と遜色ないサイクルになっています。
命中精度についてはABB、かつASCSユニットのボルトが後退する途中で発射をするミドルシュート方式のため、精度は高級中華長物電動ガンの箱出し程度の精度になっています。
加えて、上記している初発と2発目以降の初速が変化するため、GBBより多いマガジン装弾数と安定した外部ソースというメリットを活かして、狙ったところにあてるよりかは弾幕を張ることに徹した方が良い結果が出ると思います。
精度、弾数、スタミナ共に優秀な電動ガンと真正面から張り合うのは無理な話ですが、飛距離は45m程度あるので、ある程度遠距離からの制圧にも使えます。
サバゲーに使うエアガンとしては、外部ソースが使えるフィールドを探す必要があり、尚かつエアガンにダメージが入っても泣かないというメンタルが必要ですが、それでも使いたいというマニアックな人にはたまらない1挺でしょう。
再販したら飾り用にもう1挺欲しいと思っていますので、是非とも再販してもらえたらと思っています(できればメンテもお願いしたいところ)。
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