着てみた
寒いのと暑いのとどちらが嫌いかと問われると、私は寒い方が嫌いと即答するほど寒い時期は嫌いです。

寒い時期は寒さで体が動かなくなる、もしくは動きたくなくなるため防寒対策は念入りにしており、Zippoのハンディウォーマーを常に携帯したり、机下にヒーターを仕込んでみたりと、あれこれ文明の力に頼っています。

しかし、外出時は常々寒いと感じるのでなんとかならないかと思って探してみると・・・、電気で発熱する「電熱ウェア」なるものが売られているのを発見!未来の装置的なその響きに惹かれベストタイプの電熱ウェアを購入してみました。

電熱ウェアは中華製の製品があふれているためピンキリで、今回購入した「ARRIS 充電式電熱ベスト」はかなり念入りに下調べしたうえで購入しています。

というのも、1万円以下の電熱ウェアで発熱箇所が複数有り、バッテリーも発熱に余裕がある7.4Vタイプは滅多にないからです。

1万円以下の電熱ウェアの多くは、スマートフォンやタブレットPCを充電する5V出力のモバイルバッテリーを使用するタイプですが、この手のものは10Wで発熱不足と感じる人が多いと感じます。
※人間1人100Wの発熱量があるといわれている

消費電力が高いタイプは環境によっては熱いと感じるほどですが、電熱ウェアはある程度温度制御ができるので、今回購入したARRIS 充電式電熱ベストは1万円以下のベストバイといえます。

縫製の仕上がりは中華メーカーにしては思ったほど悪くない

これが、そのARRIS 充電式電熱ベストです。国内の有名メーカーとは比較にはなりませんが、縫製の仕上がりは中華メーカーにしては思ったほど悪くない仕上がりです。

他のバリエーションとしては迷彩柄バージョンがARRISで用意されている他、サンコーもOEMか同じような物を出していますが、あちらは襟付きとなっています。

襟が無い

ARRIS 充電式電熱ベストは襟が無いのでジャケットで隠せます。環境にもよりけりですが、少しお堅い仕事でも使えないことはないでしょう。

少し厚手の生地

素材は安物のジャンパーといった感じで、ゴワゴワする少し厚手の生地になっています。もちろん洗濯も可能です。(バッテリーは水濡厳禁)

サイドジッパーと肩のボタンは、まさに真のフリーサイズといえる機能(S から XXXXLまで対応)で、体型に合わせて調整ができます。

肩の調整機能
ずらすことで幅が広がる

肩はボタンにより3段階・・・

サイドジッパー
横幅の調整機能

サイドジッパーは4段階の調整が可能になっています。

発熱箇所は5箇所

発熱箇所は5箇所あり、首の付け根、腹部左右、背面左右となっています。

首の付け根部分

首の付け根部分については少し温度が高めなのか、高温モードだと暖かいというよりは熱いと感じます。

長時間付けていると火傷しそうなほど(ホッカイロを寝たまま使うと火傷するのと同じ程度)だったので、寝ながらの使用は止めておいた方が無難です(体が高温だと睡眠の質も下がる)。

また、糖尿病や血圧に問題を抱えている人も使用は避けるように説明されているので、該当する場合は導入を見送りましょう。

高温モードの発熱

発熱性能については仕様よりやや低いものの十二分な発熱具合です。室温22度の環境でヒーター表面温度を計測してみたところ、高温モードで最も低かった発熱箇所が約68度、最も高かった発熱箇所が約71度という結果になりました。

マイクロカーボンファイバーを編み込み

電熱ウェアを使うのは初めてのため、最初は電熱線で発熱するのかと思ったのですが、最近はマイクロカーボンファイバーを編み込んだものが主流になっているようで、電熱線のように線の部分が発熱するのではなく、編み込まれた「面」が発熱します(編み込み時の片よりはある)。

ベストなのでブルゾンの下に隠せる

早速着込んで使用してみたのですが、使い捨てカイロのようなじんわりとした温かさがヒーターから伝わってきます。

しかも、発熱箇所が5箇所もあるので上半身は温かさに包まれてポカポカとしてきます。

23度の暖房の効いた部屋で、ジャケット脱ぐと少し寒いと感じる着こなしで試しに使用してみましたが、ジャケットの下に着込んで高温モードで使用すると暑くて汗ばんでくるほどです。

ARRIS 充電式電熱ベストの仕様では、高温モードで約3~4時間(中は約5~6時間、弱は約7~8時間)となっていますが、高温モードで計測してみたところ実働3時間30分程度となりました。一応、仕様通りのスタミナはあるようです。
 
高温モードではバッテリーの持ちはやや物足りないと感じますが、高温モードを使う環境は頻繁に降雪するような寒い環境でもない限りありえないと思えるほど暑くなるため、厳寒地域や屋外作業でもない限りバッテリーは付属の物でこと足りるでしょう。

付属バッテリー

付属のバッテリーは7.2V 6000mAのLi-poバッテリーです。体積の割に容量があるのはLi-poならではですが、しっかりとバッテリーを制御できているのかはやや不安が残ります。
※Li-poは過放電するとガスが発生して膨張(スマホが膨らむのもこれ)して性能が劣化。過充電は特に危険で最悪発火する可能性がある。

ソケット部分

ソケット部分は充電と供給を兼ねており、ベストや充電器のプラグを入れると自動的に電源がONになり充電か放電かを判断しています。

も残量表示のLEDが点灯

充電器に接続すると、残量の表示と共にLEDが点滅して充電していることを知らせ、ベストに接続すると、ベスト側の電源をONにしていなくとも残量表示のLEDが点灯し続ける仕様となっています。

5VのUSBソケット

付属バッテリーにはDCプラグ用のソケット以外にも5VのUSBソケットが用意してあります。

USB簡易測定器で計測

こちらは通常使用することはないのですが、USB簡易測定器で調べてみたところ、5Vで通電していたのでUSB電源として使えなくはなさそうです。ただし、5VのUSBソケットは説明書に一切記載が無いので、使用する際は自己責任でどうぞ。

撮影中、見た目が専用品とも思えず汎用品では無いかと調べてみたのですが、検索を掛けると似たものが出てくるのですが、出力回路に違いがあるものばかりで、どこかのメーカーの規格品なのかもしれません。

純正のバッテリーが無難

同じものがあれば替えのバッテリーを格安で入手できるかもと探してみたのですが、どうしても見つからず、ノートPC用の外部バッテリーで代わりになるものがないかとも思ったのですが、結局、純正のバッテリーが無難という結果になりました。
※純正以外のバッテリーを使って発生したトラブルは保証対象外
※間違ってもホビー用Li-poバッテリーは使わないように。制御回路が入っていないものばかりなので最悪の場合バッテリーが燃える


専用バッテリーは、他の電熱ウェアのバッテリーよりも良心的な価格なので、リスクを冒してまで他社バッテリーを導入するのはデメリットしかありません。今のところ純正品の買い増しが無難です。
 
バッテリーの仕様表

なお、バッテリーの類似品を検索した際に見た資料だと、仕様表には出力MAX20W(15Wの物もあり)とあったのですが、本製品に付属するバッテリーの仕様表では7.4V出力は3段階調整と中国語で表記されているだけで電流や電力の表示は見当たりませんでした。
※7.4V 6000mAh smart li-polymer battery packでヒットする。

仮に20WだとしたらUSBモバイルバッテリーを使用するタイプの電熱ウェアと比べ倍の能力があることになります。

USBモバイルバッテリーを使用するタイプは確かに電源の確保が楽ですが、出力が5V2A(10W)程度なので発熱量が低く、発熱面積や発熱箇所が少なく物足りないという意見も少なくないようです。

バイク乗りが重宝する、最上位の12Vタイプ(30W~クラス)と比べると劣りますが、あちらのクラスはシガーソケット等から電力供給を直接受けるタイプなので使用時はバイクから離れることができません(重たい12Vバッテリーを持運びながら運用するのも非現実的)。

その点、20Wクラスの電熱ウェアは持ち運べるバッテリーが電源なので、性能と利便性のバランスがちょうど良くマッチしているクラスだと感じます。

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さて、スペックから読み取れる部分はおおよそ良好でしたが、実際に使ってみないと本当の性能はわからないので毎日着込んでみました。

まず、車通勤する際ですが、私は滅多に暖機運転をしないので当然、通勤時の車の中は寒いままです。

気温が2度の朝はシートがひんやりと冷たく、車の暖房とシートヒーターが温まる間まではともかく寒くて震えていましたが、ARRIS 充電式電熱ベストが即座にシートヒーターのように包み込んで温めてくれるため「寒くない」ではなく「暖かい」と感じました。

しかも、高温モードだと暖かいを通り越して「暑い」ので、中温モードで使用してこの状態です。

暖房とシートヒーターが効き始めると低温モードでも熱いのでスイッチを切りたいのですが、走行中は操作しにくいので、この点は少し困りどころです。

職場に到着して事務所に入ると暖房を入れた直後なので寒く、室内の温度計は9度を示していましたが、中温モードで温めたおかげで上半身はポカポカと暖かく、温まるまで「寒い」と呪文のように口走ることもなくなりました。

暖房が効き始めて室温が20度で安定したとき、いつもならちょうど良い案配の室温なのですが、電源を入れていない状態でも少し暑いと感じたので、ベスト自体の保温効果(ウールのベストと比較して)もあるようです。

スイッチが誤作動することがある

ただし、汗ばむと通気性の悪さが目立つのと、腕を組むなどした際に胸元にあるスイッチが誤作動することがあるので、その点は要注意です。

最高気温が4度を切った日は、風雪注意報が出るという外出には最悪の条件でしたが、高温モードのテストができそうだったので暖房も入れず、通勤の20分間を車の窓を開けて豪快に風に当たりながらテストをしてみました(田舎道なので、ほぼ法定速度を維持して走行)。

さすがに加熱されない顔や手、下半身などは寒いと感じますが、しばらくすると寒さに慣れたのか風に晒されている部分が寒いと感じず、上半身はベストが暖かいを通り越して少し熱い位で包んでくれたので、寒さで体が震えることはありませんでした。

ロマンと化したハンディウォーマー

テスト着込んでみたものの、今では手放せずそのまま日々着ていますが、冬になると使用していたZippoのハンディウォーマーが代わりにお役ご免となってしまいました。

これはこれで良いものですけど、熱量と加熱できる面積、そして不要時に加熱を止められるという利便性の前には残念ながら勝てませんでした(ただし、ロマンはある!)。

しかし、上半身が暖かくなると下半身の寒さがやはり目立ってきます。ズボンタイプの電熱ウェアもありますが、今のところこれといった物がないで保留しているものの、これ以上寒くなったら導入しているかもしれません・・・。本当に寒いの嫌なんですよ。