代替フロンガス

マルシンのCO2ガスブローバックFN Five-seveNでも少し触れていましたが、ガスガンに使用しているHFC系のガスの規制がさらに強化されることがほぼ確定した模様です。

2016年10月15日に開かれた国際会議にてモントリオール議定書の改正について協議があり、日本は2036年までにHFC系の代替フロンの85%削減に合意。今後、国内で規制強化の法改正が行われるのは間違いないようです。
※日本経済新聞の記事
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGG15H0L_V11C16A0000000/

この流れはいつか来るとは思っていましたが、今後のエアガン業界はどうなってしまうのか。現在のガスガン用ガスの現状について詳しく掘り下げてみました。

・ガスガン用のガスが規制される意味はあるのか

まず、ガスガン用のガスが何故規制になるのかについてですが、元々、ガスガン用のガスは冷蔵庫やエアコンに使われる冷媒用として開発されたガスを流用しているに過ぎません。

「それほど市場規模も大きくなく、使用している人は少ないので規制する意味はあるのか?」という意見もマルシンのCO2ガスブローバックFN Five-seveNの動画レビューで出ていましたが、規制されるのはガスガン用のパワーソースとしてではなく、冷媒用のガスとして捉えられているからです。

確かに、国内では遊戯銃用途として排出されているHFC系ガスの排出数量は、エアダスター等を含んだ数値で全体の1.1%と、排出割合はかなり小さなものになっています。
※参考資料 http://www.env.go.jp/earth/gaiyou.pdf

「HFC系のガスをガスガンに使うのは日本を含むごく一部でしかなく、世界的な規模で見ると僅かな排出量のガスガン用ガスは規制対象外にして欲しい。」と考えている人もいるかもしれません。

しかし、使用している人が少ないということは、わざわざ国際会議の場で議論に値するほどの経済的な影響力を持ち合わせていないということでもあります。
※海外のガスガンはCO2ガスを使うものが多いので、HFC系ガスの規制で打撃を受けるのはほぼ日本市場のみという事情もある。

先進国故、率先して削減に取組むべきというプレッシャーも国際会議ではあったでしょうが、結局のところ改正案に合意した以上、この先HFC系の代替フロンは規制強化となり、ガスガン用ガスも規制の対象となります。
 
・実は業界では過去に同じことがあった

またこれか・・・、とお嘆きの方もいるかもしれもしれませんが、実はガスガンのパワーソースをさかのぼると、過去に使用するガスが1回変わっていることが分かります。

元々、ガスガンはCFC12(フロン12・R12)が最初に使われていました。このガスはオゾン層を破壊するとのことで、モントリオール議定書への合意を受けて使用を全廃する流れが決定したため利用できなくなりました。

このときエアガン業界が取った対策は、当時、空調業界で次期冷媒として採用されていたHFC134aを流用するというものであり、この決定により、ガスガンはHFC134aを標準パワーソースとすることが業界標準となり現在に至ります。

すなわち、今回2回目のガスガン用ガスの転換期に来ているわけですが、モントリオール議定書の改正案は強烈な削減目標が掲げられており、間違いなく全廃への流れが急加速したといってもよいでしょう。

・HFC系のガスを規制する国際合意について

実はHFC系のガスについては、今回のモントリオール議定書の改正に合意する前から緩やかながらも規制する国際合意がありました。

まず、日本で行われた京都議定書による地球温暖化ガスの排出規制について。次にパリ協定における地球温暖化ガスの排出規制についてです。

パリ協定については、HFCについて言及されているわけではないようで、あくまでも地球温暖化ガスを何年までにこれだけ削減しましょうという目標を達成することがゴールになっています。

そのため、地球温暖化ガスの中の一つでしかないHFC系のガスについては、規制するもしないも各国の好きにしてというスタンスのようです。結果が達成できればよしということでしょう。

京都議定書についてはHFC系のガスについて言及されており、HFC134aが規制対象ガスの1つとして挙がっています(HFC152aは対象外)。

ただし、削減目標はそれほど厳しくなく、この段階ではエアガン業界ではそろそろ次のガスを考えないといけない程度にしか受け取られていないように感じられました。

しかし、今回のモントリオール議定書の改正については、2036年までにHFC系の代替フロンの85%削減という強烈な削減目標となっており、今後これを受け、国内では早ければ2018年までに法改正が行われるとのことです。

予定としてHFC系のガス製造や輸入に関しての規制強化が行われるであろうと予想されており、空調等に使う冷媒ガスの世代交代が加速しそうです。

この動きにより、HFC系のガスについては製造及び輸入減少の流れが加速していくことは必至であり、それに伴う市場価格の上昇による影響はガスガンのガスも例外というわけにはいきません。

いったいエアガン業界は今後どのような動きになるのでしょうか。

・ガスガン用の次世代ガスは何になるのか

さて、HFC系のガスが強烈な規制強化で使用することが厳しくなっていくことが決まった以上、ガスガンの次世代ガスをどうするのかという問題に対し、各メーカは早急に答えを出す必要に迫られている状態に追い込まれたといってもいいのではないでしょうか。

CO2ガスブローバック マルシンFN Five-seveN

この答えを真っ先に出したのがマルシンで、CO2ガスブローバックFN Five-seveN 等の販売からCO2を次期ガスとして決定づけたいという意思を強く感じます。

ただ、マルシンの国内のガスガンシェアはそれほど大きくなく、流れを決定づけるだけの強さは残念ながら今のところ見えていません。

ガスガンの次世代ガスについては、国内で大きなガスガンシェアをもっている東京マルイが大きな影響力を持っているため、東京マルイが発表する次世代ガスの決定がそのまま業界の標準的なガスとなることでしょう。

現在、東京マルイでは次世代ガスについて発表はありませんが、社内ではほぼ決定しているとの広報の話があったため、そう遠くはない時期に発表があるのではないかと思います。

どのようなガスになるかは分かりませんが、東京マルイは従来のガスガンにも使用できることを優先するでしょうから、充填形式は現在と同じリキッドチャージ式でしょう。

また、専用のガスを作るのもコストから考えてあり得ないので、従来通りエアコン用の冷媒ガスを流用すると思われます。

さらに、従来のガスガンに使えることを考慮すると、ガス圧がHFC134aと近く、パッキン類を侵食しないガスということになるはずです。他にも、無毒、不燃性であることも求められるでしょう。

これらの予想から、次世代ガスについてはHFO-1234yf・HFO-1234zeあたりになるかと予想されます

ただ、HFO-1234yfについては弱いながらも可燃性、圧力は35度で0.88MPaとHFC134aの約0.8Mpaよりもやや圧力が高く、現状では高価でおいそれと使えず。

HFO-1234zeについては不燃性で、価格もHFO-1234yfよりも安価。圧力は35度で0.65 MPaとHFC134aよりも圧力が低いHFC152aよりも低く、GBBの動作が快適にできるのか不安を感じます。

なお、HFC系ガスの規制は地球温暖化を抑制するものですので、各ガスの温暖化係数は当然低く、HFO-1234ze はHFC134a の1/216(CO2比率で6倍相当・HFC134aは1300倍、HFC152aは140倍)。

HFO-1234zeについてはHFC134a の1/325(CO2の4倍相当・ただし100年換算なので6年換算では1未満とする資料もあり)とかなり地球に優しいガスです。

CO2ボンベ

ちなみにCO2の地球温暖化係数は1ですが、グリーンガス等のCO2は本来不要な物として大気に放出される予定のCO2を回収しているため、化石燃料を燃やすなどの行為とは違い、あくまでも一時保管していたガスを大気放出するということになります。

地球温暖化のことを考えるとCO2を利用するほうが優しいのですが、高圧故に改造による法規制を超えた危険なガスガンが市中に流通する可能性を嫌っている業界団体や、過去の経緯からCO2に対して抵抗をもっているユーザーもおり、CO2ガスガンへの理解と普及については、まだまだ厳しいものがあると感じます(改造対策が施されたマルシンのCO2ガスブローバックFN Five-seveNはそういう意味においても良くできている。個人的にはこの手のガスガンがある程度のシェアを持って欲しい)。

今後どうなるかは分かりませんが、直近では東京マルイの発表を待ちたいところです。

※遊戯銃協業界団体の1つ日本遊戯銃協会の2013年における見解はこちら(東京マルイも参加している団体)
http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/seizou/kagaku/freon_wg2/pdf/007_01_03.pdf