真冬と言えばガスガンの元気がなくなり、屋外で使おうものなら生ガスを吹き出すだけとガスガンにとっては不遇の季節です。しかし、去年発売されたCO2ガスを使うマルシンのFN Five-seveNなら、この寒い冬でも動作するかもしれないと思い、急遽、ガスガンが絶不調の真冬にも関わらず購入することにしてみました。

このガスガンはある意味で業界の先行きを占う重要な立ち位置にあるガスガンです。

代替フロンガス

というのも、世界の流れはフロンガス、代替フロンガスの全廃に向けて動いており、地球温暖化の原因となるHFC-132aやHFC-152aもこの流れで規制を受けるようになりました。
※先進国2020年の代替フロン全廃はHCFCが対象でHFCは含まれていない

HFCはまだ規制段階で全廃の予定はないものの、地球温暖化を引き起こすガスのため、いずれはHCFCのように全廃に向けて動き出すであろうと考えらており、今後、ガスガンのパワーソースをどうするのか考える時期が近づいているのではないかと感じています。

炭酸ガス

そんな中マルシンが出した答えがCO2。そう、炭酸ガスでした。

しかし、炭酸ガスボンベの中身は6Mpa(HFC-132aが常温で0.5Mpa程度)と超高圧のため、昔から悪用して高初速のガスガンを作る人が居ましたし、高圧ガス保安法の規制により、炭酸ガスのリキッドチャージは、たとえガスガンがCO2に対応し初速も基準値内だとしても規制対象となる可能性があるため、パワーソースとしては注目されていたものの、ここ最近でCO2ガスガンを国内で販売したのはマルシンだけです。
※この手のガスガンは海外では珍しく無いが高初速で国内所持不可
※実銃外観無視のCO2リボルバーが過去にあった模様

国内では業界だけでなくユーザーサイドでも炭酸ガスに対するイメージは悪く、これを払拭すべく、業界や行政当局と綿密な打ち合わせを行い、安全性と法規制を遵守したクリーンなCO2ガスガンM1カービンをマルシンは誕生させるに至ります。

マルシンCO2ガスブローバックFN Five-seveN

そして、今回レビューするマルシンCO2ガスブローバックFN Five-seveNは、マルシンのCO2ガスガンの第2弾であり、初のGBBハンドガンでもあります。

従来のガスガンよりも安定して撃てるというCO2ガスガンとはどのような完成度になっているのか、ガスガンにとって厳しい冬に体験してみたいと思い、今回購入してきました。

無理矢理伸ばしたようなデザイン


私は、特にFN Five-seveNが好きというわけでもないのですが、無理矢理アウターバレルを延長したようなこのデザインは、かなり人を選ぶデザインではないでしょうか。

もう一つ実銃ベースの不満があるとすれば、グリップが太くて握りにくいうえ、素手だとチェッカリングが食い込んで痛いといったところでしょうか。 

ポリマーオート

外観についてはポリマーオートなのでプラスチック樹脂製。ネットのレビューで写真を見た際はGLOCKよりもおもちゃのような外観に見えましたが、実際は灰色では無く、つやのある黒色になっています。従来のマルシン製を超えた質感ではないものの、想像していたほどチープには感じませんでした。 

CO2ガスガンだからといっても、構造自体は従来のGBBそのもので、扱いについてもマガジン以外は普通のガスガンを扱うのと変わりません。

フィールドストリッピング

このように、フィールドストリッピングもできます。

ホップアップ調整用のダイヤル
ダイヤルは固め

ちなみに、ホップアップ調整用のダイヤルがこの箇所についていますので、調整時は毎回スライドを外す必要があります。リコイルショックが凄まじく、少しの衝撃程度では動かないように渋めになっており、狭いこともありグローブを付けたままだと調整しにくいです。

LD-2システムをオミット

また、マルシンのホップアップシステムLD-2システムをCO2ガスブローバックFN Five-seveNでは採用せず、新しいホップアップ構造を採用したことにより、従来のようにLD-2システムをオミットする必要もなくなりました。

マガジン

特に注目すべきなのがマガジンでしょう。ここが普通のガスガンとは違うところです。

CO2ボンベを入れるスペース

マガジンには専用の10gCO2ボンベを入れるスペースが設けてあります。

ボンベを差し込み

ここにCO2ボンベを差し込み、フタをしたら付属の工具でフタをねじ込んでいきます。ガスの漏れる音がしますが、かまわずねじ込み固定します。
※工具が無くてもコインで代用可能 

マガジン重量

高圧ガスを閉じ込めるためマガジンは頑丈になっており、マガジン重量はCO2ボンベ込みで458gとかなりの重量があります。

ちょっと違う

他にもガスルートパッキンが小さな丸穴形状だったり、ガスバルブのピンが細かったりと従来のガスガンとは
変わった箇所も散見されます。

BB弾はリップから挿入するタイプで装弾数は22発。装弾にはBBローダーが使えます。

CO2ボンベ

CO2ボンベ1個で約100発撃てるようになっています。CO2ボンベが1本150円程度(送料込価格)なので、1発1.5円とランニングコストについてはかなり高いように感じますが、この手のガスガンが増えれば、CO2ボンベももう少し安くなるのではないかと思っています。

また、従来のガスガンは途中でガスを継ぎ足せましたが、このCO2ボンベは使い切りのため、残量が残っている状態で外すことはできません。レビューの際に5本近くボンベを交換しましたが、ボンベの交換は面倒に感じます。

ボンベの交換は手間

サバゲーで使う場合は、プレイ中にガスボンベをその場で交換というのは現実的ではないので、ガス切れに備えて予備マガジンをいつも使う分プラス1本用意しておいたほうがいいでしょう。

CO2ガスを使うメリットは、安定した動作と初速が望めることです。グリーンガスの外部ソースを体験している人はその魅力を体験していると思いますが、そのグリーンガスの外部ソース装置一式がこのマガジン内部にギュッと詰まっているのです。

アウターバレルは今ひとつ

従来型のガスガンの場合、ガスが低圧のためレギュレーターを通さない構造となっており、35度の温度で初速が銃刀法の規制値を超えないように設計しているせいで、マガジンの温度が下がれば初速が下がってきます。

メーカー刻印

逆に寒いときに安定した初速が出せるような構造にした場合、今度は暖かくなった時に初速が基準を超える可能性が高く、温度により圧力が変化する不安定なガス圧にメーカーは苦労をしています。

マガジン底

しかし、CO2ガスガンでは高圧のガスをレギュレーターで減圧して使うため、HFC系のガスと比較すると寒くても熱くても安定しているというメリットがあります。

FN刻印

ガスボンベの容量が小さいため、間を開けず連続して撃つと冷えで動作が鈍くなるものの、10度以上の環境であれば動作し、初速のバラツキも従来のガスガンと比べ少ないという性格を持っています。

流石にCO2ガスガンといえども10度以下の環境では、閉鎖不良や二重装弾によるジャム、初速の低下による弾道の変化などが発生しますが、10度以上の適温であれば、安定したガス圧で動くため、スライドのブローバックに割り当てるガスも増やせ、スライドの動きは今までにないリコイルショックとキレを生み出します。

コッキングインジケーター

空撃ちしたときの甲高いパンッ!という音と共に、まるで炎天下に置いた熱々のマガジンでGBBを撃ったときのような、壊れそうなほど強烈なリコイルショックは素晴らしく、従来のガスガンでは実現できない体験ができます。

マルイのガスガンほどではないにしろ、綺麗な弾道と弾の伸び具合は、これ?マルシンのガスガンだっけ・・・と思うほどの精度です。

初速については連射すると少しずつ落ちていきますが、1秒間に1発程度の感覚で1マガジン(22撃+1発)撃ちきると、初速は約83m/s~69m/sで安定しており、それなりに安定した初速が望めます。初速自体も電動ガン並に高く、慣れれば遠距離でもヒットを狙えそうに感じます。
※約25℃の屋内にて計測

弾道については、ユーザーから評判の悪かったLD-2システムを捨てて新しいホップアップ構造に変更したため、箱出し状態でも素直に飛んでいってくれます。40mぐらいまでスーッと綺麗に伸びていく弾道に、思わず「マルシンなのかこれ?」と思うほどです。 

慣らし不要

ちなみに、マルシン製品であれば、箱出し後にスライドの擦り合わせなど、ある程度ユーザー側で慣らしが必要でしたが、CO2ガスブローバックFN Five-seveNは必要ありません。マルシンユーザーであれば、これだけでも驚きに値します。
 
幅広のエジェクションポート
エジェクションポートのデザインはGood

CO2ボンベのランニングコストの高さや、マルシンのガスガンの耐久性については、ある程度覚悟は必要だとは思いますが、CO2ガスブローバックFN Five-seveNは良い意味でマルシンらしくないGBBだと感じます。

今後のシリーズが気になる

10度以下での動作についてはさすがに不調になりますが、ガスガンの調子が弱ってくる秋や春でも活躍できそうです。もう少し暖かい時期になればフィールドでも活躍できるでしょう。

お座敷だけでなく、フィールドでも通用しそうなレベルの完成度に驚きましたが、今後のマルシンのCO2ガスガンは何になるのか、かなり気になるところです。